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歯周病は35歳ごろから発病し、日本国民の3人に2人がかかっていると言われています。しかしお口のなかをよく見てみると、歯周病になっている歯となっていない歯があります。
歯周病はデンタルプラークという細菌の塊が原因であり、歯磨きが行き届かず、プラークが長い時間歯と歯ぐきの境界部にたまっていたところが歯周病になります。
ですから毎日歯磨きでプラークをきちんと取り除くこと(プラークコントロール)ができれば、基本的には歯周病を予防することができると考えられています。20歳代ぐらいまでには正しくプラークコントロールする方法を身につけることをお勧めします。
特に、歯並びが悪いところや歯磨き器具が届きにくい奥歯は気を付けていても磨き残しが出てしまう場合があります。またプラークが石灰化したものが歯石であり、いちど歯石ができるとプラークが付着しやすくなり取りにくくなります。
初期の歯周病はほとんど自覚症状がないので、半年に1回は定期的に歯科医院に通院し、歯周病の兆候がないか検査を行うとともに、必要に応じてブラッシング指導や歯石の除去を行うことが歯周病の予防に重要です。
歯周病の原因は前述したようにデンタルプラークです。しかしながら同じようなブラッシングをしているにもかかわらず、歯周病になりやすい人となりにくい人がいます。
一部の歯周病の発症には複数の遺伝子が関与していることが報告されていますが、多くの人では歯周病に対する遺伝の影響は大きくなく、むしろ喫煙やストレスなどの生活環境や、妊娠、白血病や糖尿病などの全身の状態や病気の影響がより強く歯周病と関係しているようです。
このような状態においては、歯ぐきのプラークに対する反応を変化させることにより歯周病にかかりやすくなると考えられています。一方で、歯周病患者の中にはまれですが、家族性にそして思春期ごろから歯周病を発症する例があり(侵襲性歯周炎)、遺伝的な原因もしくは病原性の高い細菌の感染の関与が考えられています。
さらに一部の遺伝疾患の中には歯周病を伴うものがあり、これらには家族性周期性好中球減少症やダウン症候群などがあります。歯周病への遺伝的関与が疑われる場合には、特に歯周病専門医における定期的な管理が必要です。
歯周病予防を謳った歯みがき剤が販売されています。
しかし、歯周病は口の中に生息する細菌(特に歯周病原細菌)が歯と歯肉の間の溝(歯肉溝、歯周ポケット)で増殖し歯垢(デンタルプラーク、バイオフィルム)を形成することが原因です。
この歯垢は薬品などでは除去できません。したがって、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどを“適切に”使用して、直接除去することが最も大切です。
さて、歯周病予防を謳った歯みがき剤には、抗炎症作用、血行促進作用など様々な作用のある成分が含まれたものが販売されています。
特に、殺菌効果のある薬用成分として、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、塩化セチルビリジニウム(CPC)、クロルヘキシジン(CHX)などが成分として含まれています。中でも、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)は真菌を含めた広範囲の細菌に対して殺菌性があり、また帯電していないためバイオフィルムの奥深くまで浸透でき、バイオフィルム中の細菌を殺菌することができるとされています。
歯みがき剤は、「医薬品」ではなくほぼすべて「医薬部外品」です。
医薬品とは、病気の「治療」を目的とした薬のことで、厚生労働省より配合されている有効成分の効果が認められたものです。一方、医薬部外品とは、「人体に対する作用が緩和されるもので、機械器具等ではないもの」と定義され、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されています。
医薬部外品は医薬品と異なり作用の弱いものですから、薬用成分に頼らず、歯科医院での定期健診、専門的な治療を受け、歯磨き剤はホームケアの中であくまで補助的に活用しましょう。
なお、発泡剤に関しては、爽快感が得られる以外に大きなメリットはありません。長時間丁寧に磨くためには、歯磨き剤を使わない、使用する場合は発泡剤無配合のもの、または低発泡のものを選びましょう。
興味のある方は、是非、かかりつけの歯科医師の先生や歯科衛生士、日本歯周病学会のホームページ上で公開している、歯周病認定医、専門医の先生、認定歯科衛生士にご相談なさって下さい。
歯周病予防の王道は、歯と歯茎の境目に付着した歯垢(デンタルプラーク、バイオフィルム)を除去することです。
歯周病になるメカニズムを見てみましょう。発症する直接的な原因は、口の中に生息する細菌です。特に、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまう歯周炎は、歯周病原細菌が原因となっています。
歯と歯茎の境にある溝(歯肉溝)の中で細菌が増殖すると歯肉が腫れて歯肉炎という状態になり、放置しておくと溝がさらに深くなり歯周ポケットを形成するようになります。
このポケットの中にいる歯周病原細菌の直接の作用、それに対する体の側の作用で歯槽骨が溶け、歯周炎が進行してしまいます。細菌は、歯肉溝や歯周ポケットの中でバイオフィルムという状態で生息しています。歯ぐきの炎症の原因であるプラークは、うがい薬だけでは除去はできません。
予防という意味では、歯肉溝の周囲や溝の中にいる細菌を可能な限り減らすことが重要になります。このバイオフィルムは、粘着性が強く周囲を糖衣(グリコカリックス)という鎧で覆われているため、薬効成分は中にいる細菌に効果を発揮できません。
上述したように、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどで機械的に除去するのが最も効果的なのです。ただし、デンタルリンスには殺菌作用があるものが多く、バイオフィルムが壊れてバラバラな状態になった細菌に対してはある程度の殺菌効果が期待できます。
したがって、ブラッシングなどを行った後にうがい薬を使用すると補助的な効果が発揮され、歯周病の予防に役立つと考えられます。
是非、かかりつけの歯科医師の先生や歯科衛生士、日本歯周病学会のホームページ上で公開している、歯周病認定医、専門医の先生、認定歯科衛生士にご相談なさって下さい。
なお、舌表面の細菌の塊(舌苔)にも歯周病原細菌が生息していることが明らかになっていますので、柔らかい歯ブラシによる除去も心がけましょう。
歯周病予防の要!プラークコントロールについて、日本歯周病学会が解説します!
歯周病の原因は、歯と歯茎に付着するプラーク(デンタルプラーク、バイオフィルム)です。
歯周病の予防と治療において最も重要なことは、プラークとその石灰化物である歯石とをお口の中から徹底的に取り除くことです。
プラークには大きく分けて、歯茎よりも上の見える部分に貯まるプラーク(歯肉縁上プラーク)と、歯茎の中に隠れているプラーク(歯肉縁下プラーク)とがあります。同じように歯石にも、歯茎よりも上にできる歯石(歯肉縁上歯石)と歯茎の中にできる歯石(歯肉縁下歯石)とがあります。
この中で、患者さんが自ら毎日の歯ブラシで取り除くことができるのは、歯肉縁上プラークです。歯ブラシによる歯磨きを毎日しっかりと行うことが大切ですが、歯と歯の間に貯まったプラークについては、歯ブラシのみでは十分に除去できません。デンタルフロスや歯間ブラシによる清掃が不可欠です。
さらに歯石の除去や、歯茎の中に貯まってしまったプラークの除去のためには、歯科医院に来ていただく必要があります。歯科医師と歯科衛生士は、お口の中に蓄積した歯肉縁上と歯肉縁下のプラークと歯石を徹底的に取り除くことで健康な状態に戻すお手伝いをします。
歯周病を悪化させる最も大きなリスクの1つとして、喫煙が上げられます。
喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病になりやすく、歯周病の治療をしても治りにくいということが分かっています。
ちなみにタバコを1日半パック吸う人は吸わない人に比べて重度歯周炎に罹るリスクが3倍となり、1日1.5パック吸う人は6倍となると報告されています。
タバコを吸うと、タバコが含有するニコチン始め有害物質によって、血管の収縮とともに免疫機能の低下が生じます。近年はタバコ葉を加熱して吸引する新型タバコが流行っていますが、煙の量こそ少ないもののニコチンを吸引させる点では同じなのでこれまでと同じ健康への悪影響があると考えられています。
歯周病予防のためには、タバコを吸わないことが極めて重要です。日本歯周病学会は医科と歯科の多くの学会と連携しつつ、禁煙活動をさらに進めることを後押ししています。喫煙者の皆さん、これを機会に禁煙外来などを受診してタバコをやめましょう。
歯周病を改善する最も基本的な治療である、「歯周基本治療」を知ろう!
歯周病治療の基本はプラーク(バイオフィルム)の除去ですが、歯周病を予防するためにはヘルシーな食生活が重要です。とくに糖質のとりすぎによって肥満や糖尿病になると、歯周病が進行するリスクが増大します。
歯周病の進行には、細菌感染に対して生体側が過剰な免疫反応をして自らの体を破壊してしまう場合と、免疫反応が弱いために十分に防御できない場合とがあると考えられます。過剰な免疫反応を抑えるためには、抗炎症・抗酸化作用のあるバランスのよい食物の摂取が推奨されます。
ビタミンC、ビタミンE、オメガ3脂肪酸、ポリフェノールなどは抗炎症・抗酸化作用があります。オメガ3脂肪酸の摂取のためには、イワシやサバなどの青魚、くるみ、えごま油などをとりましょう。
また、細菌に抵抗できる十分な免疫力を得るためには、バランスのよい食習慣が大切です。適度な糖質と良質のタンパク質をとり、緑黄色の野菜をとりましょう。また食物繊維を多く含む食物をよくかんで食べることで、糖分摂取を抑えるとともに、腸内細菌にも良い影響を与えることができます。
これを読めば、
歯周病がどのような病気なのかを知ることができます。