歯がぐらつく

出血も多い

治療するべき?

自覚症状が出てくる中等度歯周炎。治療例をお見せします。

中等度歯周炎とは?

  • 歯周ポケットの深さが4〜6 mm
  • 歯槽骨の破壊が歯根の長さの1/3〜1/2以下
  • 歯肉からの出血が30〜50 %
  • 歯の動揺がある,または
  • 歯根の分岐部に歯槽骨の破壊が軽度にある状態

を示します。

中等度歯周炎の治療は,歯周病原細菌の形成したバイオフィルムなどの病原因子を確実に除去することによって治療することが可能です。

中等度歯周炎の病態

中等度歯周炎の病態には,不適切なブラッシングによる歯周病原細菌の磨き残しの他に、いくつかのリスク因子が関与しています。

代表的なものに、喫煙やストレス、食習慣などの環境因子、年齢や全身疾患(糖尿病、心血管疾患など)などの宿主因子、悪い噛み合わせや歯ぎしりなどの咬合因子、不適合な修復物などの局所因子が挙げられます。

初期の歯周炎は、歯周ポケットの深さが浅く、歯肉の炎症も軽度であるために、痛みがほとんどないまま経過します。

その間も、歯周ポケット内の歯周病原細菌は増加し続け、歯を支える歯槽骨は徐々に破壊されていきます。

その結果、中等度に進行した歯周炎では、歯が動揺し、歯肉の炎症が強い箇所では歯周ポケットから膿が出るなどの臨床症状が生じます。

また、上記の全身疾患へも影響を与えるようになります。

歯周病は全身疾患と関わりがある?
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中等度歯周炎の治療方法

治療の原則は、患者自身によるセルフケアの確立と、歯ブラシの届かない部位への専門的な対応です。

歯周病検査の結果をもとに、口腔内の状態を理解してもらった上で、患者個人に合ったブラッシングの方法を指導します。

その後、歯科医師や歯科衛生士による専門的な感染源の除去(スケーリング・ルートプレーニング:SRP)や抗菌薬の局所投与といった歯周基本治療を行います。

しかし、歯が動揺したままだと歯周組織が安定せず,歯周基本治療の効果が弱まってしまいます。

歯の動揺が大きい場合には、歯と歯を歯科用樹脂(レジン)や金属のワイヤーなどを用いて固定し、歯周組織を安静にした状態で治療を行っていきます。

ここまでの歯周基本治療で病状が改善しない場合、深い歯周ポケット内の歯根表面に歯石が残っている可能性があります。

一般的に、歯周ポケットの深さが5 mm以上の場合には、SRPで取り除くことのできる歯石は約10 %であると報告されています。

よって、中等度歯周炎においては、歯周基本治療後に歯石を確実に除去するための外科的な対応(歯肉剥離掻爬術)が必要になります。

最後に、歯周組織の再評価を行い、病状が安定したことを確認した上で、サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー(SPT)へ移行します。

歯周外科治療について日本歯周病学会が詳しく解説!どこよりも詳しくお伝えします。

中等度歯周炎を改善した症例

「口の中がねばねばする。硬いものが噛めない。』という主訴で受診した中等度慢性歯周炎の患者(70代 男性)です。

全身疾患として糖尿病(hba1c:5.9)がありました。

かかりつけの医師と連携をとり、全身状態を把握しながら専門的な歯周基本治療(口腔衛生指導、SRP、歯の固定)を開始しました。

その結果、歯肉の腫れや歯の動揺は劇的に改善しました。

しかし、病状が完全には安定せず、歯周ポケット内には依然として多くの歯石が残っていました。

よって、歯肉剥離搔爬術を行うことで歯石を徹底的に除去しました。SPT開始時には,歯肉は健康な状態になり、初診時にあった不快感も消失しました。

初診時

歯頸部に沈着物が多量に付着
歯肉の腫脹は軽度
歯周ポケットは深く,出血も多い
X線写真では歯根に歯石が付着

歯周基本治療後

歯肉の腫脹がやや退縮
歯の暫間固定
歯周ポケットの深さは減少
出血,動揺も軽減
歯根に付着していた歯石が減少

SPT移行時

保存不可の歯を抜歯
歯肉が退縮し,歯根が露出
歯周ポケットの深さが減少
出血,動揺も大幅に軽減
外科的な対応で,歯石を完全に除去
骨吸収が改善し,透過性が減少

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